イエス・キリストの生涯⑧弟子ペテロとイエス~私は従った

ペテロはイエス十二使徒のひとり。

上の絵で、ペテロは左から2番目。鍵を持っている人物です。(絵:アルブレト・デューラー/四人の使徒。)

イエスの問いかけに弟子を代表して答えるなど、弟子のリーダー的存在で「第一使徒」と言われています。

しかしイエス逮捕時にその場から逃げ出してしまい、イエスの預言通りイエスを三度否認してしまいます。

その後、復活したイエスから赦しを得てローマ伝道に尽力。

皇帝ネロの迫害により殉教し、のちにカトリック教会において初代ローマ教皇と位置付けられました。

ローマ郊外のバチカンの丘に、ペテロの墓所があったと伝えられている場所があり、後世建てられたのが、サン・ピエトロ大聖堂。聖ペテロの大聖堂という意味です。

「イエス・キリストの生涯」(Jesus: His Life)のエピソードと解説です。ラスト8つめのエピソードは、ペテロ。

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最初に招かれた弟子の一人

ペテロの本名はシモン。ガリラヤの漁師でした。

ペテロの弟アンデレは洗礼者ヨハネの弟子でしたが、イエスを知りイエスに従うようになります。

ある日アンデレが、ペテロのところへイエスを連れてきて紹介します。

当時、ガリラヤではみながギリギリの生活でした。ローマ帝国はあらゆる漁獲物に課税し、不漁があれば民は餓死するほどです。

働いても魚が取れなかった時のこと。

イエスがペテロに沖へ出て網を降ろしなさい、と言いました。

一晩中働いても収穫がなかったのに、ペテロがイエスに従うと、大漁の奇跡を目にすることができました。

イエスがペテロに「人間をとる漁師にしよう」と言います。

「人間をとる漁師」は、ペテロを伝道師にするという意味でした。

ペテロが選ばれた理由

イエスが弟子を募る時、優秀な人材を探していたというよりは、自らイエスに従いたい者を探していたようです。

ペテロは教養が高いわけでなく、イエスの話を理解できないことも多くありました。福音書にも学があったとは記されていません。

ペテロが選ばれたのは、

漁師であった

イエスの弟子に多い職業ですが、飢えることも勤勉に働くことも体で知っていたことを、イエスは重要視したのかもしれません。

情熱、気骨があった

イエスの死後、使徒は命がけで宣教活動をします。情熱や気骨や図太さ無ければ、続けられないことでした。

MEMO
初期のキリスト教徒は、イエスの弟子に漁師が多いこともあってシンボルに魚を使っていました。十字架がキリスト教のシンボルになったのはイエスの死から400年たってからです。

岩を意味する「ペテロ」と名付けられる

イエスが弟子たちに「私は何者であるか」と尋ねます。

ペテロが「あなたはメシア(救い主)、生ける神の子です」と返答したことに対し、

イエスが「あなたは幸いだ、ヨハネの子シモン。あなたをペテロ(ギリシア語で岩の意味)と呼ぶ。あなたはこの岩の上に教会を建てる。私はあなたに天の国の鍵を授ける…」と称賛します。

これがキリスト教教会の原点。

「天国の鍵」を受け取ったペテロに権限が与えられ、カトリック教会では、これによりペテロがイエスから初代教皇に任命されたとしています。

ヤコポ・ダ・ポントルモ/聖母子、聖アンナ、4人の聖人

イエスから鍵を受け取ったペテロは、絵画で鍵を持っていることが多いです。上の絵でも鍵を手に持つ左の人物が聖ペテロ。

弟子の足を洗うイエス

ジョット・ディ・ボンドーネ/最後の晩餐

最後の晩餐の時、イエスはすでに自分の運命を知っており、ペテロ含め弟子たちは、何か深刻な事態が迫っていると感じていました。

イエスが首都エルサレムへ乗り込んだ時、弟子たちはいよいよイエスがメシアとしての正体を現すのだと勢いづきましたが、神殿でイエスが商人を追い出したことで騒ぎになり、イエスを敵視するユダヤ人宗教指導者は警備を強化。不穏な状況へと変わっていきました。

ヤーコブ・ヨルダーンス/神殿から商人を追い払うキリスト

 
晩餐の時、イエスがペテロのもとへやってきて足を洗おうとします。

「主が私の足を洗う?そんなのいけません」たじろぐペテロ。足を洗うのは奴隷の仕事でした。

「しもべは主人にまさらない。遣わされた者は遣わした者にまさるものではない。」とイエスは答えます。

イエスは「自分は軍を率いる王ではない。苦しみを受けるためにきた」と言っているのです。

自分が十字架に架けられることを知っているイエスは、弟子たちの足をひとりひとり洗いました。

パンとワイン

イエスは不思議なことを言い始めます。

パンをちぎり弟子に回しながら「これはあなた方のために与えられる私の体である」

そしてワインの杯を回して「これは大勢のために流される私の血による新しい契約である」

と言います。これにはさすがの弟子もぎょっとします。

ユダヤ教の過越祭では子羊を屠り、祭壇を血で染め、肉は食事に臓物は祭壇で燃やします。子羊の血でイスラエルの民が神様の裁きから救われたことを過越祭では祝うからです。

裂かれたパンは子羊イエスの身体、ブドウ主はイエスが流される血。つまり、これからイエスが十字架にかけられる犠牲を暗示しているのですね。

なお、最後の晩餐からキリスト教の聖餐式、聖体拝領が生まれます。

 
「死」を暗示させるイエスをペテロは理解できません。

ペテロが持つメシアのイメージは異国(ローマ支配)を打倒し、ユダヤ王国を再建する革命家。

そのため、なぜ(イエスの)死が革命につながるのかペテロは戸惑います。

ペテロの三度の否認

最後の晩餐で、イエスはペテロに「あなたのために祈った。信仰がなくならないように」と言います。

「主よ、ご一緒なら死んでも良い」とペテロ。

しかしイエスは「鶏が鳴くまでに あなたは三度 私を知らないと言うだろう」と言います。

まさかと信じられないペテロ。
 
最後の晩餐の後、イエスはエルサレム城壁の外のゲツセマネへ祈りに行きます。

ペテロが後に続きました。自分のこの後の苦難と死を知っているイエスはひどく不安そうです。

イエスにここを離れず起きていなさい、と言われ従うペテロ。

イエスの苦悩を理解していなかったペテロは眠気が襲ってきて、つい寝てしまいます。

それに対し「心は燃えても肉体は弱い」とイエスから叱責を受けるペテロ。

 
彼らのもとへ武装した兵士が逮捕しに押しかけます。ユダが裏切ったのでした。

ユダの裏切りに気づいたペテロは、マルコス(ユダヤ大祭司カイアファの手下)の耳を剣で切り落とします。

しかしこれも「剣を取る者は剣でほろびる」とイエスから叱られることになりました。

マルコスを癒し回復するイエス。

イエスは逮捕されカイアファの屋敷へ連れられます。

ペテロはカイアファの屋敷の中へ追いかけていきました。

 
ペテロがイエスの様子を見ている時、三人の人物からイエスと一緒にいた男だと言われます。

怖くなりとっさに否認するペテロ。三度聞かれ三度否認してしまいます。

三度目の否認の瞬間、鶏が鳴きました。イエスの予告通りだったのです。

視線が会い、イエスはペテロの魂を見据えます。

生前のイエスをペテロがみるのはこれが最後でした。

きねちゃん

ユダヤの大司祭カイアファの屋敷跡とされる場所に鶏鳴教会が建てられています。名前から分かる通り、ペテロが否認してしまった場所です。

イエスの赦し

イエスを否認し逃げてしまったペテロ。

イエスの磔刑をみることもせず、身を隠していました。

なぜイエスを否認した?私もユダと同類か?

イエスの磔から三日後、マグダラのマリアが復活したイエスを見たと伝えます。

そんなことあるはずない、と激しい拒絶をするペテロ。

信じられないというより、自分自身への恥だったのかもしれません。

 
その後、イエスが復活した姿で弟子たちの前に姿を表します。

ペテロはイエスを見て、かつてないものだと理解します。しかしペテロは直視できません。自分に失望しているイエスを見るのが怖かったのです。

そしてペテロは漁師に戻ります。

 
ある日、浜辺に目をやるとイエスの姿がありました。

ペテロは駆け寄り、イエスの前でひざまずきます。自分のために戻ってきてくれたイエスをみて、自分で縛っていた心の鎖がほどけるのを感じます。

ジョヴァンニ・バッティスタ・クレスピ/使徒ペテロとパウロの前に現れたキリスト

 
イエスはペテロに三回「私を愛しているか」と聞きます。

ペテロは「私があなたを愛していることはあなたがご存じです」と答えます。

ペテロが三回イエスを否定したことに対し、イエスは三回尋ねているのです。

そして「私の羊を世話しなさい」といい、ペテロが弟子たちの指導者になるよう促しました。

この日からペテロは変わります。

教えを広めるようイエスが告げ、ペテロと弟子たちは伝道に命をかけます。

ペテロの殉教

ペテロは様々な人を救うという使命を理解し、エルサレムで信仰と伝道に全身全霊を捧げ、信者のリーダーとなりローマで布教活動を行います。

しかし皇帝ネロの迫害にあい、殉教します。

殉教前、危険を察知した信徒たちに懇願されローマから離れようとしますが、ペテロがローマから出てしばらくすると歩いているイエスの姿を見つけました。

クォ・ヴァディス(あなたはどこへ行くのですか?」と聞くと、イエスが「(あなたがローマを見捨てるなら)私がもう一度十字架にかかります」と答えられ、ペテロは元来た道へ引き返し、そこで十字架にかけられ殉教しました。

十字架にかけられる際、イエスと同じ十字架にかかるのは恐れ多いとし、逆さ十字架にかかります。

グイド レーニ/聖ペテロの磔刑

MEMO
「クォ・ヴァディス」は、ポーランドの小説家ヘンリック・シェンキエヴィチが、同名小説を書き、映画にもなりました。ローマのキリスト教迫害を描いた作品です。

イエスの死後10年もたたずにキリスト教は1万人、200年後には100万人近く、そしてイエス死300年年後には、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世がキリスト教に改宗。現在世界にいるキリスト教信者は23億。

命がけの伝道活動が、今では世界中に広まっているんですね。

サン・ピエトロ教会

バチカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の名前の由来はペテロから来ています。聖ペテロの大聖堂です。

ローマ郊外のバチカンの丘に、殉教したペテロの墓所があったと伝えられている場所があり、その上に建てられました。

 

我々にある過ちや弱さを見せてくれるのがペテロ。

同時に許されやり直すことが出来ると教えてくれる存在です。

きねちゃん

「イエス・キリストの生涯」、どれもとても面白かったけど、私はラストこの回が一番感動しました。聖ペテロさんが好き。
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