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登場時間20分弱!エリザベート歴代ルドルフ役(東宝・帝劇ミュージカル)について

もともと「ルドルフ」がメインのミュージカルになる予定だった


ウィーンで生まれたミュージカル『エリザベート』は、脚本家のミヒャエル・クンツェ氏が、そもそも皇太子ルドルフを題材にしたミュージカルを創ろうとしていました。

父帝フランツ・ヨーゼフ1世との対立、マイヤーリンクでの男爵令嬢マリー・フォン・ヴェッツェラとの心中、とルドルフの悲劇的な人生は、映画の題材にもなっているほどです。

しかし、ルドルフについて調べるうちに、母親のエリザベート皇后の生涯に興味が移り、最終的にミュージカル『エリザベート』が生まれる事になりました。

きねちゃん

ルドルフが主人公だったら、どんなミュージカルになったんでしょうね。それも気になります。

東宝版で描かれるルドルフ

国や世界の行く末を憂い父の皇帝に背き、革命運動に身を投じ、最終的には自ら命を絶つ。

これが、20分弱で描かれるルドルフです。

東宝版ルドルフ登場シーン時系列

①父と息子
②憎しみ(HASS)
③♪闇が広がる
④独立運動
⑤♪僕はママの鏡だから
⑥マイヤーリンク

東宝版は、ルドルフ登場してから命を絶つまで全てのシーンでルドルフが出ているので、この間に彼の数年が凝縮され、とりわけ生き急いでいる感が強い印象です。

オリジナルのウィーン版や、ウィーン初演キャストPia DouwesさんとUwe Kroeger さんが再度登場したエッセン版では、①~⑥の間に、エリザベートがコルフ島で父の霊と話すルドルフが登場しない「パパみたいに(リプライズ)」が入るんですね。東宝版ではルドルフ登場前に入ります。

ルドルフ登場シーンの曲順比較

以下、東宝、ウィーン、エッセン版で曲順を比較してみました。

ルドルフが出てこない「パパみたいに(リプライズ)」は斜体


東宝版
(初演2000年)
ウィーン版
(初演1992年/再演2003年)
エッセン版
(初演2001年)
パパみたいに(リプライズ)
父と息子♪闇が広がる父と息子
憎しみ(HASS)父と息子憎しみ(HASS)
♪闇が広がる憎しみ(HASS)♪闇が広がる
独立運動独立運動
パパみたいに(リプライズ)パパみたいに(リプライズ)
♪僕はママの鏡だから♪僕はママの鏡だから♪僕はママの鏡だから
マイヤーリンクマイヤーリンクマイヤーリンク

MEMO

ウィーンは初演が1992年ですが、2003年の再演で曲の追加や曲順の変更があるので、再演版をここでは取り上げています。ウィーン再々演版は私は、実際に確認できていないのですが、調べる限りここは再演と同じ流れです。

『エリザベート』は世界各地で上演されており、演出が国ごとに違います。ここでは、東宝版と比較のために、オリジナルのウィーン版、「私が踊る時」が追加となったエッセン版を取り上げました。

独立運動シーンは日本(宝塚版)が初

表に宝塚版を入れていませんが、「独立運動シーン」は日本の宝塚初演が初出。ウィーン演出版には無かったシーンで、日本人には独立運動シーンがあった方が話しがわかりやすいという事で、演出家の小池修一郎氏が追加しました。その後、東宝版だけでなくハンガリー版、ドイツエッセン版にも入っています。

ウィーン版にはマリー・ヴェッツェラが登場し心中説をにおわせている

東宝版、宝塚版、エッセン版にはマリー・ヴェッツェラとの心中するシーンはありませんが、ウィーン版はマイヤーリンクのシーンで、ルドルフと心中したマリーが死の舞踊の踊り手として登場します。トートも日本とは違い女装姿で、ルドルフが死に至る経緯に心中説をほのめかしています。

東宝版の過去公演のルドルフ役の印象

過去公演では 一例ですが、次のように公演ごとにルドルフの印象が少しずつ違いました。ルドルフ役者さんによって変るというよりも、同じ役者さんでも公演ごとに違った印象です。

  • 終始トート(死神)に翻弄され、操り人形のよう
  • 志高く皇太子として国を守りたいという強さから始まり、それが自身を追い詰めて自ら死を選ぶ
  • 理想に燃える熱い想いもあるが、揺さぶりをかければあっけなく崩れ落ちる

役者さんによって「死」への理由づけが違う?

一部のルドルフ役者さんになりますが、過去インタビューから面白いと思ったものを。役者さんによって「父」「母」と比重が異なるのが興味深いと思いました。

古川雄大さん

父親への最後の反逆。自分が死ねば世継ぎがいなくなる。何かが変わると信じていた。(「エリザベート」とクンツェ&リーヴァイの世界より)

ルカス・ペルマンさん
(ウィーン版エリザベート再演、ルドルフ役のセカンドキャスト。2007年「ウィーン版エリザベート」にルドルフ役として来日。)

父親とはあくまでも職業上の対立。母親に理解されなかったことが大きな落胆となった (2007年「ウィーン版エリザベート」来日公演に際してのインタビュー。)

ルドルフが歌う曲

ルドルフが歌う曲は多くありません。しかしドラマチックで心に残る曲が歌われます。

①トートとルドルフのデュエット「♪闇が広がる」

ルドルフ登場3分後に歌われるこのビッグナンバーは、ミュージカル『エリザベート』劇中歌の中で、一番好きだという人も多いのではないでしょうか?私は一番好きです!

歌の内容は、青年になったルドルフの前にトートが現れ、「沈む世界を救うのはお前だ」と革命を扇動するようそそのかすもの。その結果ルドルフが死んで自分のものにするために。

ルドルフに肩入れてこの作品をみていると、トートが悪魔か!(死神ですが)と思える曲です。

トートに追い詰められながら、絞り出すように「王座ーー!」と叫ぶルドルフ。徐々に彼自身の破滅へと向かっていくドラマチックなナンバーです。

尚、高音と低音パートをルドルフとトートが歌うのですが、東宝版ではルドルフが高音を歌う事が多いです。(途中で入れ替わることもあります)。ウィーン版、宝塚版はトートが高音でルドルフが低音です。

②エリザベートに拒絶される「♪僕はママの鏡だから」

ルドルフ
♪僕たちは 似たもの同士だ
♪この世界で 安らげる居所が無いよ

♪僕はママの鏡だから ママは
♪僕の思い 全てわかるはず

エリザベート
♪分からないわ

父フランツ・ヨーゼフ一世と亀裂が入り、母エリザベートに救いを求めるも拒絶されてしまう。ルドルフの最後の望みが絶たれる悲しい歌です。東宝版では(宝塚版も)、この歌詞の中で国を憂うルドルフの言葉も入っているので、最後の最後まで国の未来を考えていたという事も伝わります。

エリザベートと対になるセリフ

ルドルフ:ママは僕を見捨てるんだね
エリザベート:あなたは私を見殺しにするのね

原語(ドイツ語):Laesst du mich im Stich?

ルドルフのセリフは「♪僕はママの鏡だから」のあと。エリザベートに向かって。
エリザベートのセリフは「♪私だけに」の前。夫フランツ・ヨーゼフ一世に向かって。

対になるセリフで原語のドイツ語では、全く同じセリフが使われています。

ダンスシーン

ルドルフはダンスシーンも見どころです。

「独立運動」での、トート軍団vsルドルフ軍団のダンスバトル。

マイヤーリンクでのトートダンサーに翻弄されながら舞うような美しいダンス。

特にマイヤーリンクはルドルフが生きてきた証や死への葛藤など、内面が表面化されるダンスだと思うので、一挙手一投足見逃したくないところです。

エリザベートと対比するとより際立つ悲劇性

ルドルフは「悲劇の王子」とよく言われますが、似ているといわれているエリザベートと比較すると、その悲劇性がより際立ちます。

対皇帝フランツ・ヨーゼフ一世

舞台でのフランツ・ヨーゼフ一世は、実在した皇帝と同じく温厚にみえる人物像です。エリザベートとはすれ違ったままとはいえ、皇后の職務を放棄し旅を重ねる妻を辛抱強く待ち続け、旅の資金援助を惜しまず、エリザベートに深い愛情をみせます。

しかしルドルフに対する態度は、厳しい上に頑なです。『エリザベート』でルドルフが登場するシーンも、父フランツ・ヨーゼフ一世と争っている所から始まります。

皇位継承者の息子が政権に批判的で危険分子にも見えるほどなので、フランツの立場としてはやむを得ないかもしれません。でも妻エリザベートにみせる優しさを少しでもルドルフに分けてあげたら…と思えてしまうほど。

ルドルフだけには一切逃げ場を与えないその厳しさこそ、のちのちの不幸を招いてしまう一因となります。

対トート

エリザベートとルドルフとの比較でわかりやすいのが、トートとのデュエットです。

トートとエリザベートのデュエット「♪私が踊る時」では、人生の手綱を自分で握りトートを一蹴するエリザベート。2人の関係はほぼ互角…というよりも、トートを寄せ付ける隙を見せないこの時のエリザベートはとても強い。

しかしトートとルドルフのデュエット「♪闇が広がる」になると、ルドルフがあっけないほど簡単にトートに主導権を渡しているのがわかります。

トートの挑発に簡単にのるルドルフと、してやったりのトート。なすすべもないままトートに翻弄され、破滅へと向かうルドルフのもろさがエリザベートとは大きく異なります。

愛された経験の有無

トートを拒否できるエリザベートに対して、トートを「友達」と呼び、たやすく近づくのを許してしまうルドルフ。

この差はどこか?と考えると、実在したルドルフは親から愛された実感が無く、幼い頃から愛情に飢えていたからではないかと思います。

エリザベートは両親、とりわけ父親から愛されていたという確かな実感があり、また彼女を愛し続けてきた夫のフランツ・ヨーゼフ一世の気持ちは、理解し合えなかったとしても受け取っていたはずです。

一方ルドルフは、幼い頃に母エリザベートから離され、皇太后ゾフィーの下、厳しい軍隊的教育を受けそれが繊細だった彼を追い詰めます。7歳でようやく母エリザベートが親権を取り戻しますが、エリザベートは旅から旅を重ねてウィーンにとどまる事が少なくルドルフを放任。

エリザベートが新しく任命した教育係の影響で自由主義思想を持ち、父親のフランツ・ヨーゼフ一世とは政治的思想が対立し親子の亀裂が生じます。

エリザベートもフランツ・ヨーゼフもルドルフの親なので、彼らなりの愛情はあったはずですが、ルドルフがそれを愛情と認知できるほど十分ではなかったのではないか?と思います。

実際のルドルフは女性関係が盛んでしたが、それも幼少のころから愛情に飢えていたからかもしれません。ミュージカルでは出てきませんが、ルドルフには10歳離れた妹マリー・ヴァレリーがおり、彼女に対してルドルフは激しい嫉妬心を持っていたといわれています。マリー・ヴァレリーは、エリザベートにとっては初めて、姑のゾフィーではななく自分の手で育てられる子供だったため、他の子どもに対する愛情とは明らかに差があったためです。

逃げ場がなかった

エリザベートは宮殿から逃げることでなんとか生き続けられた人です。しかし生まれた時から地位を背負った皇太子ルドルフには逃げ場がなく、ルドルフにとってはあの最後しかなかったのかもしれません。

彼にとってトート「死」は救いだったのか…. その答えは劇場で。

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