当サイトはPRを含みます

モーツァルト!歴代ヴォルフガング(東宝・帝劇ミュージカル)まとめ※感想つき

ミュージカル『モーツァルト!』の主役ヴォルフガングは、実在した最も有名なクラシック音楽家の一人、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトをモデルにした役です。

きねちゃん

ヴォルフガングは舞台にほぼ出ずっぱり。歌にダンス、そして家族への愛情と自立の葛藤に悩み自身の才能に翻弄される、高い演技力も要求される役柄です

東宝版歴代ヴォルフガング年表(年齢つき)

読み方
  • 初、②→初:ヴォルフガング役初、②:ヴォルフガング役2回め、以降同じ
  • 出演時の年齢
  • ヴォルフガング役初出演は太文字


ヴォルフガング役
2002年井上芳雄(初・23歳)
中川晃教(初・19~20歳)
2005年井上芳雄(②・25~26歳)
中川晃教(②・22~23歳)
2007年井上芳雄(③・28歳)
中川晃教(③・25歳)
2010~2011年井上芳雄(④・31歳)
山崎育三郎(初・24~25歳)
2014~2015年井上芳雄(⑤・35歳)
山崎育三郎(②・28歳)
2018年山崎育三郎(③・32歳)
古川雄大(初・30~31歳)
2021年山崎育三郎(④・35歳)
古川雄大(②・33歳)

ミュージカル「モーツァルト!」のヴォルフガング役ってどんな役?

天才ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを演じる役

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは最も有名なクラシック音楽家の一人。

モーツァルトは幼いころから「神童」と呼ばれ数々の天才エピソードを持ちます。

  • 5歳ですでに作曲を始めていた
  • 父から以外ほぼ独学で音楽を学ぶ
  • 14歳のとき門外不出の12分の九声合唱曲を、一度聴いただけで記憶し譜面に書き起こす
  • 器楽、声楽、宗教曲など全てのジャンルで代表曲がある
  • 人と会話しながら作曲しちゃう。しかも同時に2曲作っちゃう
  • 書き直しが少なく、頭の中にすでに曲ができている。(一般的にはチェンバロ(ピアノ)など楽器を使いながら試行錯誤し作曲する)
  • モーツァルトの音楽はヒーリング効果が高いと証明されている→風のそよぎ、小川のせせらぎのような自然界に存在する1/f(エフ分の1)ゆらぎ(アルファ波)で進行する楽曲が多い

クラシックの大家は他にもいますが、器楽、声楽、宗教曲全てのジャンルにおいて代表作を持つのはモーツァルトだけといっても言い過ぎではありません。

モーツァルトの時代、音楽は権力者や宮廷のものでした。作曲家は使用人やお抱え職人という立場に過ぎず、彼らは主人の気に入るように音楽を作っていたのです。

そのような時代にモーツァルトは、「神から与えられた才能」を自負し、権力者の意のままになろうとせず、時代を超えた音楽を作りました。

きねちゃん

類まれな才能を持つモーツァルトでしたが、人間的には子供っぽいままで社会性に乏しい人でした。

「ベッドで💩してぶっとばせ!」

と作詞した曲を書いたり、

「💩で君のベッドを汚してやるぞ!」
「あなたの鼻に💩をします」

と手紙に書いたりしています🙄

  • 出身地:神聖ローマ帝国ザルツブルク(現在のオーストリア中北部に位置する都市)
  • 生年月日:1756年1月27日(35歳没)
  • 代表曲:トルコ行進曲、ピアノソナタ第16(15)番、きらきら星変奏曲、ピアノ協奏曲第20番、21番、アイネ・クライネ・ナハトムジーク、交響曲第25番、交響曲第40番、交響曲第41番 「ジュピター」、レクイエム、オペラ「フィガロの結婚」、「魔笛」など

才能と肉体をわける・・・才能に葛藤する人間モーツァルトが「ヴォルフガング」

ミュージカル『モーツァルト!』には、幼少期に奇跡の子と呼ばれた「才能」を擬人化した「アマデ」(子役)が登場します。

  • 奇跡の子と呼ばれた子供時代の「才能」=アマデ
  • ありのままの人間「肉体」=ヴォルフガング

成長した肉体(ヴォルフガング)と才能(アマデ)の二人でモーツァルトを演じるんですね。

 

アマデの設定は、モーツァルトの死因が「たぐいまれな才能が肉体から全てを奪った」という解釈をもとにしたものです。(ちなみにモーツァルトの死因説は150近くあります。)

大人になったヴォルフガングは、快活さと自分の才能にゆるぎない自信を持つ人物として、私たち観客の前に現れます。

彼には子供時代の自分の姿をした才能(=アマデ)が見えていて、アマデとヴォルフガング、一心同体で曲を紡いでいきます。

史実で、楽譜の書き直しをしなかったというモーツァルト。よく言われることですが、これはモーツァルトの頭の中にすでに曲が入っていたためで、ミュージカルではヴォルフガングの頭にあるメロディ―をアマデがすらすらと楽譜に記していく様子がみられます(「♪僕こそミュージック」)

しかし神から授けられた才能(アマデ)は、次第にヴォルフガングから父、姉、妻、有力者からの庇護、安定した生活を容赦なく奪っていきます。

そして、ヴォルフガングは気づく。

「あれ? 才能(アマデ)って、自分だよね? なんでコイツが僕から奪うんだ?」

人々が称賛する自分の「天才性」は、僕自身?

一心同体であるはずだったアマデに対し、絶望の目を向け始めるヴォルフガング。

そうだ、コイツがいなくても僕は作曲できる…はず…

この、才能ゆえに苦悩する人間モーツァルトを演じるのがヴォルフガング役です。

家族との葛藤

作品の中心の一つがヴォルフガングと家族、とりわけ父レオポルトとの関係です。

ヴォルフガングを自分の手元に置きたい父レオポルト。

ヴォルフガングに全てを捧げてきたレオポルトは、自分の庇護から離れ飛び立とうとするヴォルフガングに「家族を捨てるのか」と訴えます。

しかし自由を求める心と、神から授けられた才能(アマデ)がヴォルフガングを突き動かし、家族とヴォルフガングを引き裂こうとします。

家族への愛と、自立への葛藤に苦しむヴォルフガング。

そして父の愛は今のありのままのヴォルフガングではなく、幼い時の「アマデ」に向けられている。なぜありのままの自分を愛してくれないのか?

二幕で歌われる「♪何故愛せないの?」は、ヴォルフガング演じる役者さんの大きな見せ場です。

アマデが内在しているのか、アマデの器なのか

上記の父と子の関係は才能(アマデ)が肉体(ヴォルフガング)にもたらした残酷な一面です。

個人的な感想ですが、面白いのが、ヴォルフガングが孤独で可哀想に見えることもあるし、逆に哀れに感じないこともあること。

天与の才能アマデが内在している神の子モーツァルトなら、全てを犠牲にしても音楽の使命を全うするのが当然と思え、ヴォルフガングの人生に残酷さを感じながらも「可哀想」と思うのはちょっと違うのかなと。人類を救うため犠牲になった神の子イエス・キリストを思わせます。

一方、ヴォルフガングはあくまでも人間で、彼に名声をもたらす才能(アマデ)にとって「器」でしかなかったとしたら、音楽のために全てを奪われるヴォルフガングの孤独や絶望のすさまじさは、観ているこちらが苦しくなるほどです。

尚、天与の才能アマデが内在している前者のタイプはあまりいなくて、後者のヴォルフガング像の方が多いように感じます。

この感じ方の違いは、各役者さんの役作りや、公演ごとの父レオポルトとの関係、もしくは私自身のその時々の感情によるものかもしれません。

ヴォルフガング役に限らないですが、生のお芝居はその時々で印象が変わるのも面白い点ですね。

東宝版モーツァルト!歴代ヴォルフガング役ご紹介

注意!

個人的な感想・意見を多く含みます。
また、公演ごとにヴォルフガング像が各役者さん変わってくると思います。
軽く感想程度に読み流してもらえると幸いです。

受賞→『モーツァルト!』で受賞したものだけ記載しています。

井上芳雄(いのうえ よしお)


生年月日 1979年7月6日
出生地 福岡
身長 182cm
血液型 A型
愛称 よしおさん

ヴォルフガング役で出演した年

2002年、2005年、2007年、2010~2011年、2014~2015年

出演時の年齢

23歳~35歳

受賞

2006年:第13回読売演劇大賞 杉村春子賞(「モーツァルト!」のヴォルフガング・モーツァルト役、同「エリザベート」のルドルフ役の演技)
2007年:第33回菊田一夫演劇賞・演劇賞(「モーツァルト!」のヴォルフガング・モーツァルト、「ウェディング・シンガー」のロビー・ハート、「ロマンス」のチェーホフほかの役の演技に対して)
2011年:第20回日本映画批評家大賞・ミュージカル大賞(「モーツァルト!」他)


『エリザベート』で皇太子ルドルフでデビューした後、大抜擢されたのが『モーツァルト!』のヴォルフガング役。

今となっては東宝ミュージカルはもとより、ミュージカル界に欠かせない第一人者となられていますね。

中川晃教さんと初演、再演、再再演とWキャストを組み、その後2度山崎育三郎さんとWキャスト。12年、5度にわたりヴォルフガングを務めました。

初演からナンネール役で共演した高橋由美子さんが、「あっきー(中川晃教さん)は天才でよっしー(井上芳雄さん)は秀才」とおっしゃっていた事がありました。

このコメントのように、才能部分が完全にアマデのもので、大人になってから天才でないと気付いてしまった井上さんヴォルフガングの、挫折や絶望といった負の感情の表現が素晴らしかったです。

一方、人間モーツァルトのもつ快活さが根底にあり、作品の光と影が井上さんヴォルフガングを通して鮮烈に表現されていました。

井上さんは歌が素晴らしいミュージカル俳優さんのお一人ですが、とりわけヴォルフガングの曲は井上さんの声をよく合い、「♪僕こそ音楽(ミュージック)」の美しさは、モーツァルトの音楽の、均整がとれた完全美を思わせます。

中川晃教(なかがわ あきのり)

#帝劇コン Program🅱️絶賛上演中❗️
♪「僕こそ音楽」(『モーツァルト!』):#中川晃教
(写真は2005年公演より)
【LIVE映像配信はコチラ】
 http://eplus.jp/tmc-st/  pic.twitter.com/s8wfva7FFS

生年月日 1982年11月5日
出生地 仙台
身長 ー
血液型 B型
愛称 あっきー

ヴォルフガング役で出演した年

2002年、2005年、2007年

出演時の年齢

19歳~25歳

受賞

2002年:第57回文化庁芸術祭賞 演劇部門新人賞(ミュージカル「モーツァルト!」における演技)
2003年:第10回読売演劇大賞 優秀男優賞(「モーツァルト!」のヴォルフガング役の演技)
2003年:第10回読売演劇大賞 杉村春子賞(「モーツァルト!」のヴォルフガング役の演技)


演出の小池修一郎先生から「天才」と言われ、共演した市村正親さんからは「同時代でなくて良かった」と言われた方。

2001年シンガー・ソングライターでデビューしたのち、2002年ミュージカル初出演でヴォルフガングを演じられました。

自由奔放さと、ふとした瞬間に消えてしまいそうな繊細さがあり、天才モーツァルトの説得力が誰よりもある方だと今も思います。
奇跡の子「アマデ」は中川さんのヴォルフガングの中に生きてきて、二人で一つ。

どの曲も「歌う」というより中川さんヴォルフガングさんの内側から自然と奏でられるメロディーに感じられ、まさに音楽の申し子。音楽そのもののモーツァルトで唯一無二の存在です。

演出指示が出ているのに、毎回自由に動きすぎてしまうと後日談でありましたが、この自由さこそ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトなのかもしれないですね。

今はヴォルフガングとして舞台に立つことはないですが、現在でもテレビやコンサート等でヴォルフガングの「♪僕こそ音楽(ミュージック) 」などを歌ってくれ、時に井上芳雄さんと一緒にヴォルフガングとしてマイクの前に立ってくれるのが嬉しいです。

山崎育三郎(やまざき いくさぶろう)

生年月日 1986年1月18日
出生地  東京都
身長 177cm
血液型 A型
愛称 いっくん

ヴォルフガング役で出演した年

2010~2011年、2014~2015年、2018年、2021年(予定)

出演時の年齢

24歳~35歳

受賞

2010年:第36回 菊田一夫演劇賞「菊田一夫演劇賞」(『モーツァルト!』ヴォルフガング役に対して)


破天荒で束縛されるのは大嫌い。でも幼く甘えっ子で、実在のモーツァルトの人間性ってこんな感じだったんじゃないかなと思わせてくれた山崎さんヴォルフガング。

父に愛され自分も父を愛していると思っていたけど、父が求めていたのはありのままの自分ではなく、子供のころの才能と従順さだったーー愛を掴もうとし掴めず、狂気を帯びていく山崎さんヴォルフガング。

そしてそんな山崎さんヴォルフガングに呼応するように、悲しいエゴを全開させる父レオポルトを演じた市村正親さん。

山崎さんヴォルフガングの「何故愛せないの?」での絶望の深さが心に残ります。

尚、井上さんと山崎さんのヴォルフは2014年でDVD化されており、山崎さんバージョンでは、完全に正気を失った(ようにみえる)ヴォルフガングの姿が残っています。

古川雄大(ふるかわ ゆうた)

#帝劇コン Program🅰️絶賛上演中!
♪「僕こそ音楽」(『モーツァルト!』):#古川雄大
(写真は2018年公演より)
【LIVE映像配信はコチラ】
 https://www.tohostage.com/tmc/stream.html  pic.twitter.com/fD8cGo4shY

生年月日 1987年7月9日
出生地 長野
身長 181cm
血液型 A型
愛称 ゆん
受賞

ヴォルフガング役で出演した年

2018年、2021年(予定)

出演時の年齢

30~33歳

受賞

2019年:第44回菊田一夫演劇賞 演劇賞(「モーツァルト!」のヴォルフガング・モーツァルト、「マリー・アントワネット」のフェルセン伯爵、「ロミオ&ジュリエット」のロミオの役の演技に対して)


2018年に誕生した新ヴォルフガングの古川雄大さん。私は公演期間前半の帝国劇場(その後、梅田、御園座で公演)でしか拝見していないので、役作りに変化があったかもしれませんが、観劇当時の古川ヴォルフガングから受けた感想を。

古川さんは父レオポルトのしつこいまでの干渉がとても腑に落ちるヴォルフガングで、ほうっておけない雰囲気が歴代ヴォルフガングの中でも強いです。(ウィーン版のOedo Kuipersさんを思い出しました)

レオポルトは息子を使って自分の願いを叶えようとする、今でいうと毒親に見える部分もあるのですが、古川さんに関しては、能天気にあまり深く考えて居なそうで「そりゃ心配になるよね」とレオポルトに同情したくなってしまう…歴代ヴォルフガングの中でも親子関係がぐっと身近なものに見えます。

また、古川さんヴォルフは「音楽が好きなただの人」で才能は完全にアマデのものに見えました。

音楽を愛する気持ちはすごくあるのに、モーツアルトの音楽に「ヴォルフガングだけは不要」。アマデに全てを奪われ、壊されていった「哀れな器」。

歴代ヴォルフガング役者さんの中でも特に孤独に感じるヴォルフガングでした。

 
 
冒頭でも書きましたが、ヴォルフガング役は歌にダンス、演技と見所いっぱい。ほとんどのシーンで舞台に出ています。

アマデとの関係、家族との関係における表情の変化は、舞台はもちろんDVD化されている映像でも見ておくと、より楽しめるかなと思います。

旧演出版2014年の井上さんと山崎さんのヴォルフガングバージョンしか出ていないのですが、この2つは買い!だと思いますよ!

「モーツァルト!」DVD 【井上芳雄Ver.】
キャスト
ヴォルフガング・モーツァルト/井上芳雄
コンスタンツェ/ソニン
ナンネール/花總まり
ヴァルトシュテッテン男爵夫人/香寿たつき
セシリア・ウェーバー/阿知波悟美
アルコ伯爵/武岡淳一
エマヌエル・シカネーダー/吉野圭吾
コロレド大司教/山口祐一郎
レオポルト/市村正親
アマデ/日浦美菜子
公式サイト(東宝モール)
「モーツァルト!」DVD 【山崎育三郎Ver.】
キャスト
ヴォルフガング・モーツァルト/山崎育三郎
コンスタンツェ/平野 綾
ナンネール/花總まり
ヴァルトシュテッテン男爵夫人/春野寿美礼
セシリア・ウェーバー/阿知波悟美
アルコ伯爵/武岡淳一
エマヌエル・シカネーダー/吉野圭吾
コロレド大司教/山口祐一郎
レオポルト/市村正親
アマデ/柿原りんか
公式サイト(東宝モール)