2幕プロローグ
1809年11月18日 ウィーン/聖マルクス墓地
再びヴォルフガングが葬られている共同墓地。
研究に役立てたいからと、コンスタンツェに話を聞こうとするドクトル・メスマー。
ウィーンでのヴォルフガングの様子を語る。
ここはウィーン
1781年10月 ウィーン/カジノ・ツア・メールグルーベ
ウィーンで評判になり始めるヴォルフガング。
シカネーダー、そしてヴァルトシュテッテン男爵夫人はじめ貴族たちは完璧な音楽・天才と称賛する。
一方、サリエリのように人気は今だけと辛辣な声を挙げるものもいる。
ここはウィーン。背中にナイフを刺して手にキスをする。
一度成功したら後は潰される。死んだらもてはやされる。
モーツァルト肯定派と否定派で衣装の色が異なる。肯定派の衣装は金色系、否定派は銀色系。靴も同系色で揃えている。(2021年5月ミュージカルウィークでの話より)
♪ピアノ・コンチェルト第24番 ハ短調(KV491)
愛していればわかりあえる
ウィーン/バルコニー付の部屋
作曲を続けるアマデの横でコンスタンツェのことばかり想うヴォルフガング。そこにコンスタンツェが現れる。
お金を盗んだと養父のトーアヴァルトに殴られたコンスタンツェは、家を出てきた。
ヴォルフガングとコンスタンツェの姿をみたアマデはその場を去る。
愛の巣
2人のところへコンスタンツェの母セシリアと義父のトーアヴァルトが現れる。
「娘がもてあそばれた」とヴォルフガングに結婚を強要。コンスタンツェの母セシリアを扶養する誓約書を結ばせ、背いたら親子に慰謝料を払う約束をさせようとする。
警察を呼ぶと脅されたヴォルフガングは誓約書に署名。
セシリアとトーアヴァルトはコンスタンツェを連れて出ていく。
愛していればわかりあえる(リプライス)
1人になったヴォルフガング。アマデが再び作曲を続ける。
しかしコンスタンツェは、誓約書を手に持ちヴォルフガングの元へ戻り、「あんたを信じている」と誓約書を破り捨てる。
アマデは作曲を止める。
プリンスは出ていった
ザルツブルク/タンツマイスターハウス
ザルツブルクのナンネール。
プリンスは出て行った。残されたプリンセス・・・
結婚したい相手がいるナンネールだが、貧しい相手だったため父親から反対されている。
自分の結婚資金は弟に使われてしまった。返してほしい。私の人生を。
ナンネールの嘆きをみてレオポルトは歌う。「ナンネールは毎日泣いている。」
「お前は家族を見捨てたままなのか。お前の居場所はここだけだ。お前のほか この家族を救えるものはいない」
実際、ナンネールは自分の選んだ結婚相手を父に反対され、父のすすめで15歳年上の子持ちの男性と結婚します。
友だち甲斐
ウィーン/ヴォルフガングのピアノ室
父からの手紙を読み「違う。僕は家族を見捨てたりはしない」とヴォルフガング。
演奏会の収入を姉の結婚資金に送ろうと考える。
そこへシカネーダーなどの友人たちが訪れ遊びに送る。
お金を貸してと言うが、姉に送るからと断るヴォルフガング。
しかし新しいコンチェルトが出来、興奮して友人にそのお金を与えてしまう。
友だち甲斐に出ている悪友3人は実在の人物。フランツ(魔笛のザラストロ役)、ベネディクト(魔笛のタミーノ役)、ヨハン(魔笛の指揮者)※2021年おけぴ貸切公演のまくあいマップ参考。まくあいマップはおけぴ公式サイトで確認できます。会員登録後(無料)で観ることができます→https://okepi.net/kangeki/1124
ダンスはやめられない
ヴォルフガングが出かけた後の、散らかった部屋に帰宅したコンスタンツェ。
芸術家の夫を支えなくてはいけない。
彼にインスピレーションを与えるのは私。
しかし望む人生を生きていない空虚さがある。
ダンスしている時だけ幸せになれる。
毎晩、どこかへ踊りにゆく。
やめられない。
神よ、何故許される
ザルツブルク/レジデンス(居城)の芸術作品陳列室
ザルツブルク。コロレド大司教はモーツァルトの音楽の才能にあらためて驚嘆。自らが探求し続けてきた神の摂理が、音楽の魔術に敗北するとは。
アルコ伯爵に命じ、父レオポルトを呼ぶ。
モーツァルトに恩赦を与えるからザルツブルクへ連れ戻せと命令。
しかし父レオポルトは答える。
「愚息はそのようなお慈悲には値しません」
「新たなる奇跡の子をご覧いれましょう。」
「孫のレオポルトです。息子同様、私の血をわけています。」
「私は天才を一人、この手で創り出しました。いつでも天才を作ることができます。」
自分の欲しい「モーツァルト」ではないと、コロレドはレオポルトは引き下がらせる。
天才は人間が作れるものではないとコロレドは分かっていた。
傲慢で無礼な男が作る音楽に、どうしようもなく惹かれる自分に気づく。
♪歌劇「皇帝ティトの慈悲」序曲(KV621)
ウィーンからの手紙
1785年3月 ザンクト・キンゲン/ナンネールの新居
結婚したナンネール。新居でウィーンを訪れたレオポルトからの手紙を読む。
弟の成功を喜ぶが、ヴォルフガングの稼ぎを聞いた夫は嫌味を言う。
※歌なし
ナンネールの夫の名前はベルヒトルト・フォン・ゾンネンブルク。父レオポルトのすすめで結婚しています。ナンネールの15歳年上で、2人の先妻と死別した子持ちの男性でした。
ウィーンのレオポルト
ウィーン/ブルク劇場の舞台裏
ウィーンへやってきたレオポルト。
息子は皇帝からブラボーと言われ、多くの喝采を受けていた。
「天才を息子にもってさぞ誇らしいでしょうね」ヴァルトシュテッテン男爵夫人に問われ、
「確かに誇らしくはあります。しかし、満足できません。私は天才をこの手で育てた。奢り高ぶり才能と金を浪費している自覚さえない」と答える。
「派手なふるまいをするのは、あなたに1人でやっていけることを認められたいのよ」
たしなめる男爵夫人。
自分が成功すれば父は喜んでくれるはずと信じていたヴォルフガング。
しかし父から返ってきたのは、曲の複雑さとヴォルフガングのふるまいに関する厳しい叱責。
「息子は消えてしまった。お前の顔など死ぬまで見たくない」
思ってもいなかった父の拒絶を受けたヴォルフガング。
♪ピアノ・コンチェルト第9番 変ホ町長(KV271)
私ほどお前を愛するものはいない(リプライズ)
私以外にお前を守れるものはいない・・・
愛情かエゴか
レオポルトは繰り返す「私ほどお前を愛するものはいない」
何故愛せないの?
公演が成功し父も喜んでくれると思っていた。でも父は認めてくれなかった。
なぜ、このままの僕を愛せないの?
僕の話す言葉はパパの耳に届かない。
何故パパが去ったのか 僕にはわからない。
もう守ってはもらえないだろう。子供のようには。
思い出だけ抱きしめ生きていく・・・
でも答えて欲しい
なぜ愛せないの?
このままの僕を
乾杯!ヴォルフガング
ウィーン/ラントシュトラーセの家
ヴォルフガングのいない家にたたずむコンスタンツェ。
「フィガロの結婚」の成功を2人で祝おうと話していたのに、ヴォルフガングはいない。成功すればするほど距離が遠くなる。
あなたのインスピレーションになれない
踊れないパートナーみたい
愛していればわかり合える
互いの奥深く触れ合えば
信じていたのよ 2人の愛だけは
色褪せることはないと約束したわ
何があろうと・・・
「誇り高く生きる」
コンスタンツェを見つめていたヴォルフガングは妻のもとへ近寄る。
仮面舞踏会[誰が誰?/謎解きゲーム/誰が誰?(リプライズ)]
ヴォルフガングの夢の中。アマデの合図で仮面の人々は歌う。
誰を信じる?
褒めて嘲る全て芝居かりそめ
真実なんてない
「謎解きゲーム、僕は得意」自信ありげなヴォルフガング。
「でも一つだけ解けない謎がある。それは自分の人生の謎解きだ」
「目には見えなく、言葉で言えない、壊れやすくて移ろいやすい
愛情ではなく、才能ではなく、成功でもない何か」
誰を信じてよいかわからなくなるヴォルフガング。
仮面をつけた父親から「私が与え、受け取ったのに壊してしまった。二度とは手に入らない・・・その答えは幸せだ」と見捨てられ、
ヴァルトシュテッテン男爵夫人からは「もうあなたは大人でしょ。人はいつか親から離れなくてはならないの」と言われる。
袋小路に陥ったヴォルフガングは、「パパ!」と叫び、目を覚ます。
ヴォルフガングをじっと見つめるアマデの姿がある。
謎解きゲーム:ヴォルフガング、コロレド大司教、レオポルト、仮面の人びと
誰が誰?(リプライズ):仮面の人びと
借金の手紙
ウィーン/ラントシュトラーセの家
ウェーバー一家が金をせびりにくる。ヴォルフガングに無理矢理借金を依頼する手紙を書かせようとするが、「もう利用されるのは嫌だ」ヴォルフガングは拒否する。
パパが亡くなったわ
ナンネールが現れ、パパが亡くなったと伝える。
ナンネール「何故パパを傷つけたの 全て与えてくれたのに
パパを裏切り 私を裏切った 決して許さない」
打ちのめされるヴォルフガング。
コンスタンツェ「あなたを許さないまま亡くなったけど気にしないで
自分の道を進んで、父親を亡くして、人は大人になるのよ」
父への悔悟
父とわかりあえる時がくることを僕は祈った。
それなのにもう会えない。
逆らったけど今ならわかる。あなたの言葉は真実だった。
何処へ行けばいいのか。
何を得られるというのか。
自分の道進むだけ
心と身体裂かれようと。
モーツァルトの混乱
あわれな男、愚かな男、恥を知れ…
臆病な力弱き者・・・
アマデがヴォルフガングの首を絞める
混乱したヴォルフガング。
コンスタンツェがヴォルフガングに寄り添おうとする。
ヴォルフは、アマデに向かって「お前は悪魔だ」「お前が家族を引き裂いた」「悪魔」と叫び責める。
レクイエム ニ短調より「Dies irae/怒りの日」
星から降る金(リプライズ)
アマデが指し示す方向に目をやるとヴァルトシュテッテン男爵夫人が現れる。
「大人になるということは倒れた後も立ち上がること」
「音楽に身を捧げるなら 全ての鎖断ち切るの」
「なりたい者になるため 星からの金求め 一人旅に出るのよ」
フランス革命
1789年7月のある日 ウィーン/グラーベン広場
父の死から2年後、フランス革命が起きる。
市民たちは言う。「人は自分の足で歩いて初めて人間になれる」
シカネーダーが「大衆にもわかるようドイツ語でオペラを作るんだ」とヴォルフガングにオペラ『魔笛』の台本を渡し、その後アマデが台本を手に取る。
破滅への道
民衆を取り締まるコロレド大司教。ヴォルフガングに言う。
コロレド「お前はどこへ向かうのか。進む道を誤るな。楽にみえる道の行方には 破滅だけが待ち構える」
ヴォルフガング「僕が書くのは市民の為だ」
コロレド「その才能を浪費してはならない。お前の理解者は 私しかいないのだ」
ヴォルフガング「僕の理解者 あなたではない」「僕はどこへ向かうのか 僕が決める」
2018年新演出の際に追加になった曲。2021年公演は2018年公演のものから少し歌詞の変更がありました。
ヴォルフガングの才能を認めているコロレド大司教ですが、2人が求めるものは異なり決裂。恐らく↓のように2人の考えは異なります。
コロレド:大衆に迎合した音楽を書くこと=楽な道
ヴォルフガング:貴族からの庇護を受け作曲すること=楽な道
ウィーン版では、成功した「魔笛」公演の後にこの曲が使われます。日本版は魔笛の前。ドイツ語直訳タイトルは「安易な道/楽な道」。
あのままのあなた
ウィーン/あずま屋(アウフ・デア・ヴィーデン劇場の裏庭)
オペラ『魔笛』を作曲しているヴォルフガング。
あずま屋でシカネーダーや女優たちといると、コンスタンツェがやってくる。
作曲に専念すると聞いていたのに。女優といちゃいちゃする夫。
あの人はインスピレーション与えてくれるの?
お金なんてない頃の方が 絆は強かった。
あのままのあんたを 愛していたかった。
あなたが愛しているのは自分の才能だけ。
私は才能より愛されなかった。
怒るコンスタンツェに帰れというヴォルフガング。
コンスタンツェが立ち去り、『魔笛』が出来上がる。
この作品では、アマデがコンスタンツェを嫌っている事が徹底して伝わってくるのですが、コンスタンツェもヴォルフガングの才能(=アマデ)を愛さず、そしてヴォルフガングが妻より才能(アマデ)を愛していると示しているのがこの場面かなと思います。
歌劇「魔笛」(KV620)/レクイエムの依頼
『魔笛』は成功し、ヴォルフガングは喝采を受け、シカネーダーから光る魔笛を渡される。
アマデがそれを取ろうとすると、ヴォルフは自分のものだと抱え込む。
その瞬間、魔笛の光は消える。
成功したヴォルフガングの元へ仮面をつけた男が訪れレクイエムの依頼をする。
「パパのために?」「それとも・・・」
男はいう「自分の力で書くのです!」
「魔笛」初演の際、夜の女王を演じたのはコンスタンツェの姉ヨゼファでした。ミュージカル『モーツァルト!』でもヨゼファ役の俳優さんが夜の女王に扮しています。
光る魔笛は2021年の新演出
レクイエムとは鎮魂曲。死者のための曲。
実際に、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが灰色のマントをまとった謎の男から作曲の依頼を受けた作品。未完成のうちにモーツァルトは亡くなります。
モーツァルト!モーツァルト!
モーツァルトの音楽を称える人々の声の中、ヴォルフガングは五線譜に筆を走らせる。
ヴォルフガングの姿をじっと見つめるアマデ。
ヴォルフガングの後ろで歌っている人々。振付が決まっているところと自由なところがあり、それぞれの想いを込めて歌っている。前の演出の方が自由なところがあった。(5月ミュージカルウィークでの話より)
モーツァルトの死
1791年12月4日夜遅くモーツァルトの家
作曲を続けようとするヴォルフガングだが書けない。
ヴォルフガング「このレクイエムを捧げよう 僕自身に」
羽根ペンを自らの腕に突き刺すが血が出ない。
アマデに向かってヴォルフガングは言う「僕は死んで お前も死ぬ」
「僕こそ・・・(ミュージック)」
ヴォルフガングはアマデの手をとり、自分の心臓に羽根ペンを突き刺させる。
ヴォルフガングとアマデは息絶える。
セシリアが現れ、ヴォルフガングのお金をとっていく。
再び冒頭の墓場のシーン。
ドクトル・メスマーは骸骨を発見し、コンスタンツェにお金を払う。
息絶えたヴォルフガングを見つけたナンネール。
近くにあったアマデの小箱の蓋をあけると、モーツァルトの作品があふれ出てくる。(音楽の泉)
様々に解釈できるヴォルフガングとアマデの最期。オリジナルウィーン版では、病の床についたヴォルフガングの腕にアマデが羽ペンを刺し、その血でレクイエムを書き続け、血がでなくなるとヴォルフガングの心臓にアマデが羽根ペンをつきたてます。ヴォルフガングが亡くなりアマデがロウソクの火を消し消える、という最期。
影を逃れて(フィナーレ)
自分の影から逃れられるのか
戦い終わり命果てて
残されるのは お前の不滅の評価
生きてる限り捜し続ける 真実の顔
運命に従う他ないのか
影から自由になりたい