ミュージカル「マリー・アントワネット」の旧演出版のあらすじと曲です。2006年帝劇で初演を迎え福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場での公演を経て再び2007年帝国劇場での凱旋公演が行われました。若干手直しが加えられ、下記の内容は凱旋公演のものになります。2021年東宝ミュージカル『マリー・アントワネット』あらすじ・曲・キャスト・豆知識
主な登場人物
マリー・アントワネット | フランス王妃 |
---|---|
マルグリット・アルノー | 孤児として生まれた貧しい少女 |
アニエス・デュシャン | マルグリットが修道院学校時代に世話になったシスター |
アクセル・フェルセン | スウェーデン貴族 |
ルイ16世 | フランス国王 |
ボーマルシェ | 劇作家。狂言回しの役。原作には登場しない |
オルレアン公 | 国王の従兄弟。国王夫妻失脚を願う |
カリオストロ | 錬金術師。時代の歯車を動かすような存在 |
ラパン夫人(マダム・ラパン) | 売春宿の女主人 |
※旧演出版では、ボーマルシェをはじめ、カリオストロ、オルレアン公と3名が狂言回し的な役目を担っていた。
あらすじ
プロローグ
錬金術師カリオストロ登場。あらゆる時代を旅する彼は、もっとも栄光に浴していた時代を呼び戻そうとしている。
愛と偽り、陰謀とどん欲、理想と残虐が混沌と渦巻く時代。
カリオストロはいう「ささいな原因ほど大きな結果を生む」
1779年、フランスパリ。劇作家ボーマルシェ、ルイ16世、王妃マリー・アントワネットが現れる。
- ♪1779年
一幕
パリでは人々が飢えと貧困に苦しんでいた。
スミレの花を売る少女がひとり。孤児として生まれ希望を抱くことを知らないマルグリットは、劇作家のボーマルシェにスミレを売るが、受け取った硬貨はブリキのニセ金だった。
- ♪もう無くすものもない
- ♪なぜ
- ♪もう無くすものもない(リプライズ)
怒ったマルグリットは、ボーマルシェを追う。そこはキャンドルが煌めくパレ・ロワイヤル。国王の従兄弟オルレアン公主宰の舞踏会が開かれていた。フランス王妃マリー・アントワネットは、スウェーデン貴公子フェルセンとダンスに興じている。
舞踏会にもぐりこんだマグルグリットは王妃がいることを知る。貧しいものたちを助けて、と懇願するもかえってきたのは嘲笑だった。王妃にシャンパンを浴びせられ打ちひしがれるマルグリット。
- ♪ご覧 王妃を
- ♪なぜケーキを食べない
パリの路上でマルグリットの目に映るのは、命の瀬戸際をさまよう老人や子供の姿。あの貴族たちこそ、この世の闇に目を向けるべきだという思いがマルグリットの胸に突き上げる。
街角でマルグリットは、修道院学校時代に世話になったシスター・アニエスと再会する。
- ♪100万ドルのキャンドル
- ♪流れ星のかなた
ヴェルサイユ宮殿では今日もマリー・アントワネットはドレス・メーカーのローズ・ベルタンや宝石商らと、贅沢な品々を物色している。財務長官のチュルゴーは無駄遣いを控えるよう注進するが聞く耳をもたず、彼をクビにするよう国王に迫る。気の弱い王は王妃の要望を拒絶せず、財務長官を罷免する。
- ♪完璧な王妃
- ♪不器用な王
実験室でカリオストロは、フランスの歴史を大きく揺り動かす準備に忙しい。まず彼は、路頭に迷ったマルグリットを売春宿の女主人ラパン夫人に出会わせる。
- ♪幻の黄金を求めて
ラパン夫人に食べ物を与えてもらったマルグリットは夫人の宿で働き始める。
- ♪心の声
- ♪お望み叶えて
アントワネットとフェルセンは切ない胸のうちを吐露する。一方、カリオストロは王位を狙うオルレアン公とマルグリットを再会させる。
- ♪もしも
国王の鍛冶工房で、ギヨタン博士が新たな発明品ー処刑道具のギロチンを披露。その鋭い刃をみつめるルイ16世とマリー・アントワネット。
- ♪ギロチン
パリ市民たちは、ボーマルシェの扇動で、王妃を誹謗中傷し嘲笑う。突然、売春宿を経営した罰として、ラパン夫人の公開鞭打ち刑が施行され夫人は命を落とす。命令したのは王妃本人。その場に居合わせながら恩人を救えなかったマルグリットは、貧困のない自由な世界のために闘おうと民衆に向かって呼びかける。
- ♪オーストリア女
- ♪心の声
- ♪神は愛してくださる
アメリカ独立戦争に従軍するフェルセンが、王妃に別れを告げに来る。嘆く王妃に民衆の苦しみをやわらげ、愛させる王妃になってほしいとフェルセンは告げる。
- ♪すべてはあなたに
- ♪そして 諍い
オルレアン公は、カリオストロとボーマルシェに民衆を扇動して王妃を失脚させるよう依頼。カリオストロは魔術を使って、ロアン大司教、その愛人のラ・モット夫人、宝石商ベルメール、マルグリットを操り、かの有名な首飾り事件を起こす。
- ♪私こそがふさわしい
- ♪七つの悪徳
1785年、ヴェルサイユ宮殿でマリー・アントワネットは、大勢の貴族たちの前で、高額な首飾りが自分名義を騙って購入され、行方知れずであると知らされる。身に覚えのない王妃は、自分を陥れる罠だと主張し、事件に関与したロアン大司教を逮捕させる。宮殿にしのびこんだマルグリットはラパン夫人の血がしみこんだ布を王妃に投げつける。マルグリットも逮捕される。
- ♪なんというセレモニー
二幕
1786年。パリ高等法院で首飾り事件の判決が下される。ロアンとマルグリットは無罪。王妃に対する国民の不満は頂点に達する。釈放されたマルグリットは、「逮捕すべきは王妃だ」と群衆によびかける。アニエスは、人を傷つけることは何の解決も得られないとマルグリットを諭すが、マルグリットは聞く耳を持たない。
- ♪正義の鐘よ
1789年。聖職者、貴族、市民の代表が一堂に会し三部会が開かれる。そのさ中、生まれながらに障害を持つ皇太子のルイ・ジョセフが8歳で亡くなる。
- ♪三部会のパレード
- ♪DAN・DA・DA・DAN
- ♪流れ星のかなた(リプライズ)
国勢への不満を爆発させた第三身分の市民たちが国民議会を成立。バスチーユ襲撃に続きフランス革命が勃発。マルグリットはパリの貧しい女たちを扇動しようとするが女たちは動かず、オルレアン公がボーマルシェに指示を出し、お金をばらまき女たちをヴェルサイユ宮殿に行進させる。
- ♪運命の年
- ♪金が決め手
宮殿でマリー・アントワネットがフェルセンへの手紙を書いている。そこへ民衆が乱入し、女装して紛れ込んでいたオルレアン公により国王一家はパリのチュイルリー宮殿へ連行される。
- ♪愛したことだけが
- ♪何かが間違ってる
ローズ・ベルタンの店では、移り変わりの激しい政務と経済についての話が盛り上がっている
- ♪PARIS CUT パリ情報
過激な政治結社ジャコバン派の集会。背後で糸をひくカリオストロのもと、オルレアン公は、マルグリットを召使として王妃のもとに送り込み、同行を探らせることを提案
- ♪恐怖政治
マルグリットは王妃の召使として働き始める。1791年フェルセンが準備した逃亡計画によって国王一家は馬車でオーストリアを目指すが、国境近くのヴァレンヌで捕まってしまう。
- ♪ヴァレンヌへの逃亡
国王一家は、パリのタンプル塔に幽閉されている。ルイ16世は息子に自分の心情を語りかけ、マリー・アントワネットはフェルセンへの手紙をマルグリットに託している。そこへロベスピエールがやってきて「市民ルイ・カペー」と呼びかけ、王政が廃止されたことを告げる。
- ♪もしも鍛冶屋なら
- ♪流れ星のかなた(リプライズ)
- (ランバル夫人の死)
タンプル塔の外では、フィリップ・エガリテ、かつてのオルレアン公が暴徒たちを率いている。タンプル塔から出たランバル夫人は殺され、首を棒に突き刺して歩く姿をアニエスは「神が罰を下しますように」「これは人間の犯罪です」と口にする。一触即発の空気の中、マルグリットとアニエスはフェルセンに再会する。王妃からの手紙がラブレターではなく、フェルセンに王室救助を命令するものと知り、フェルセンは衝撃を受ける。
- ♪我らは兄弟
- ♪なぜあなたは王妃なのか
カリオストロの予言通り、ルイ16世が処刑される。マルグリットはマリー・アントワネットの髪が白くなっていることに気づく。カリオストロは人間たちに、望むものは自由なのか、それともすべて幻か問う。
- ♪みんな狂っている
- ♪ILLUSIONー或いは希望ー
マルグリットの計らいで、マリー・アントワネットはフェルセンとつかの間の時間を共にする。「私のことは忘れて」とフェルセンに別れを告げたばかりのマリー・アントワネットは、ロベスピエールの手により、息子のルイ・シャルルからも引き離されることになる。「私を殺して」と叫ぶマリー・アントワネット。
- ♪すべてはあなたに(リプライズ)
- ♪王子を引き離せ
1793年。マリー・アントワネットに対する裁判。一方的な裁判に理不尽さを覚え、証言台に立ったマルグリットは王妃からの手紙の受け取りを否認。しかし侮辱的な容疑がでっちあげられ、結局マリー・アントワネットの死刑が確定する。
- ♪その首をはねろ
パリの革命広場。熱狂の中、マリー・アントワネットは断頭台の露と消える。群衆の中に、マルグリット、アニエス、カリオストロ、ボーマルシェがいる。やがて人々はそれぞれ声を挙げていく。
カリオストロ「私が描きだした人間こそ不思議だ。なぜかどこかで見たような歴史を繰り返す。それぞれの手が掴んだのは傷ひとつない自由か」
オルレアン公「すべてを掴みたいのなら緻密な計画を立てろ」
オルレアン公/ボーマルシェ「この世界は変わりはしない。奪いあうのだ 自由を」
マルグリット「ひとりひとり 血が通った人間なのに なぜなの 人は自由を求めて憎しみを武器にする 愛を忘れた暗闇には自由の光はない」
アニエス「人間らしく」
「解放 幻想 血 愛 奇跡 決断 愛 自由 自由!」
- ♪その時がきた
- ♪自由のために血を流せ
- ♪自由
マリー・アントワネット初演(凱旋公演)曲一覧
一幕
日本語タイトル | 歌 |
---|---|
1779年 | ボーマルシェ、カリオストロ |
もう無くすものもない | マルグリット、ボーマルシェ、貧民たち |
なぜ | マルグリット、ボーマルシェ |
ご覧 王妃を | 貴族たち、女性客たち、傍観者、オルレアン、マルグリット |
なぜケーキを食べない | オルレアン、マルグリット、マリー、ポリニャック夫人、客、フェルセン、貴族たち |
100万ドルのキャンドル | マルグリット |
流れ星のかなた | アニエス、マルグリット |
完璧な王妃 | マリー、ローズ、レオナール、召使、ベメール、ラ・フェルテ、チュルゴー、ランバル夫人 |
不器用な王 | ルイ16世、マリー |
幻の黄金を求めて | カリオストロ |
心の声 | ラパン夫人、マルグリット |
お望み叶えて | ラパン夫人、女たち、マルグリット |
もしも | マリー、フェルセン、マルグリット、オルレアン、全員 |
ギロチン | ギヨタン博士、ルイ16世、カリオストロ |
オーストリア女 | ボーマルシェ、群衆 |
心の声 | マルグリット、全員 |
神は愛してくださる | アニエス、マルグリット |
すべてはあなたに | マリー、フェルセン |
そして 諍い | マリー、フェルセン |
私こそがふさわしい | オルレアン |
七つの悪徳 | ボーマルシェ、オルレアン、カリオストロ |
なんというセレモニー | ボーマルシェ、貴族たち、カリオストロ、ルイ16世、マリー、マルグリット、ベメール、ロアン、サン・ジェームズ |
二幕
日本語タイトル | 歌 |
---|---|
正義の鐘よ | 全員 |
三部会のパレード | ルイ16世、マリー、貴族たち、ランバル夫人、通りからの声 |
流れ星のかなた(リプライズ) | マリー、従僕、ルイ16世、ロベスピエール、オルレアン、貴族たち |
運命の年 | ボーマルシェ、カリオストロ |
金が決め手 | マルグリット、洗濯女たち、オルレアン、貧民たち |
愛したことだけが | マリー、フェルセン |
何かが間違ってる | マリー、ルイ16世、テレーズ、ポリーヌ、マルグリット、オルレアン、貧民たち |
PARIS CUT パリ情報 | ローズ、レオナール、ラ・フェルテ、ボーマルシェ |
恐怖政治 | ロベスピエール、ジャコバン党員、エベール、オルレアン、マルグリット、ミラボー、全員 |
ヴァレンヌへの逃亡 | カリオストロ、ボーマルシェ、エベールの声、ルイ16世、マリー |
もしも鍛冶屋なら | ルイ16世、ルイ・シャルル |
流れ星のかなた(リプライズ) | ランバル夫人、看守、ルイ・シャルル、マリー、マルグリット |
我らは兄弟 | 暴徒たち、アニエス、オルレアン、マルグリット、フェルセン |
なぜあなたは王妃なのか | フェルセン |
みんな狂っている | ボーマルシェ、カリオストロ、マリー、マルグリット、フェルセン |
ILLUSIONー或いは希望ー | カリオストロ |
すべてはあなたに(リプライズ) | フェルセン、マリー |
王子を引き離せ | ロベスピエール、マリー、オルレアン、マルグリット、ルイ・シャルル |
その首をはねろ | 裁判官の声、マリー、検察官、傍聴人たち、マルグリット、エベール、全員 |
その時がきた | アニエス、マルグリット、群衆 |
自由のために血を流せ | マリー |
自由 | 全員 |
CD(旧演出)
「マリー・アントワネット」 ハイライト・ライヴ録音盤CD
ミュージカル「マリー・アントワネット」の初演版はCDが出ていますが、のちに追加になったカリオストロの「♪ILLUSIONー或いは希望ー」はCDに含まれません。(上記の表には含めました)
2006年12月7日~10日収録
マルグリット・アルノー / 新妻 聖子(Disc 1)、笹本 玲奈(Disc 2)
アニエス・デュシャン / 土居 裕子
アクセル・フェルセン / 井上 芳雄
ルイ16世 / 石川 禅
ボーマルシェ / 山路 和弘
オルレアン公 / 高嶋 政宏
カリオストロ / 山口祐一郎
ロベスピエール / 福井 貴一
ローズ・ベルタン / 春風ひとみ
ラパン夫人 / 北村 岳子
ランバル公爵夫人 / 河合 篤子
ベメール/エベール / 広田 勇二
ラ・フェルテ / tekkan
ギヨタン博士 / 佐山 陽規
ロアン大司教/レオナール / 林 アキラ
公式サイト(東宝モール)
旧演出版キャスト
役 | 2006年11月~2007年3月 帝国劇場/博多座/梅田芸術劇場 | 2007年4月~5月 帝国劇場 |
---|---|---|
マリー・アントワネット | 涼風真世 | 涼風真世 |
マルグリット・アルノー | 新妻聖子 笹本玲奈 | 新妻聖子 笹本玲奈 |
アニエス・デュシャン | 土居裕子 | 土居裕子 |
アクセル・フェルセン | 井上芳雄 | 今拓哉 |
ルイ16世 | 石川禅 | 石川禅 |
ボーマルシェ | 山路和弘 | 山路和弘 |
オルレアン公 | 高嶋政宏 | 鈴木壮麻 |
カリオストロ | 山口祐一郎 | 山口祐一郎 |
2021年東宝ミュージカル『マリー・アントワネット』あらすじ・曲・キャスト・豆知識