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イエス・キリストの生涯①奇跡の子の養父ヨセフ~私は守った~

「イエス・キリストの生涯」(Jesus: His Life)のエピソードと簡単な解説です。まずは①「奇跡の子の養父ヨセフ」。

マリアの夫で血のつながらないイエス・キリストを愛し守った、養父ヨセフから話が始まります。

ヨセフを演じるのは、ウエスト・エンドやブロードウェイの舞台でも活躍するラミン・カリムルーさん。

オペラ座の怪人25周年記念公演キャスト(ファントム役)であり、日本にも何度も訪れています。2019年には日本の『ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート』にも出演されてましたね。

上記の絵はフランチェスコ・ヴァンニ/聖家族(ブタペスト国立西洋美術館)。

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はじめに

イエス・キリスト誕生前の状況を簡単に説明しておきます。

  • イエス誕生時、ローマ帝国は勢力を急速に伸ばした超大国。抵抗勢力は徹底的につぶしていた
  • ローマの東、ユダヤ人の故郷ユダヤでは、ローマ帝国が残忍なヘロデ王※を公認
  • ユダヤ人は怯え、「救世主」の出現が噂された

※ジーザス・クライスト・スーパースターに出てくるヘロデ・アンティパスの父

ヨセフとマリア


ジョルジュ・ド・ラ・トゥール/大工の聖ヨセフ

ヨセフの故郷はエルサレムのベツレヘムでしたが、160キロほど北のガリラヤ ナザレに住んでいました。

ヨセフは一般的に「大工」で知られています。しかし正式にはギリシャ語で「テクトン」=「なんらかの建設労働者」を指すのだそう。

汗水を流して働き、愛する女性(マリア)のためにナザレに家を建て、分相応な暮らしを望む善良な人物でした。そのヨセフの身に途方もないことが起こります。
 

ある日、マリアがヨセフの元にやってきて、妊娠していることを伝えます。

結婚初夜前だったので、驚きショックを受けるヨセフ。

マリアは夢で、「大天使ガブリエルから神の子を身ごもったと告げられた」とヨセフに伝えます。

マリアがガブリエルから告知を受けるのは、絵画で多く描かれている「受胎告知」。上記の絵はレオナルド・ダ・ヴィンチの受胎告知(ウフィツィ美術館)です。

 

ヨセフは善良な人物でしたが、突然そんなことを言われても信じられません。

マリアが自分を裏切った、自分を愚か者だと思っているのだと、ひどくショックを受けます。

 
ナザレは200~400人の全員知り合いのような小さな村。

マリアの不貞が知られたら家族には不名誉なことです。

当時、不貞は死刑に値するものだったので、マリアには危険が及ぶ状態でもありました。

ヨセフは裏切られたと傷ついていましたが、マリアを愛する気持ちは変わらなかったので、

マリアを傷つけず秘密を守るため、ひそかに縁を切ることにします。

きねちゃん

このエピソードは、1人の男として苦悩するヨセフを神聖化せず、またマリアの不貞を公表しない誠実さを描いています。

ダビデの子、ヨハネ

ある夜。ヨセフは夢をみます。

天使が現れ、「ダビデの子、ヨセフよ。恐れずマリアを妻にせよ。胎内の子は神の子。イエスと名付けよ。」

「ダビデの子」と呼びかけているのが重要です。

ダビデは、ユダヤ人史上最も神聖で偉大な王様です。

困難な歴史を歩んできたイスラエルの人々は、いずれダビデのようなメシアが自分たちを救ってくれると信じていました。

ヨセフが「ダビデの子」であれば、マリアのお腹の子はいずれ王やメシアになるにふさわしい家系になると意味を持つからです。

目覚めたヨセフはマリアの元へ急ぎ、2人は結婚します。

故郷のベツレヘムへ

幸せな2人でしたが、ナザレから出ていく必要に迫られます。

イエス誕生前、ローマ皇帝は初代アウグストゥスの時代で、ローマ帝国の人口は世界の2割(=現在の30か国分に相当)を占めていました。

当時のローマは強大で、ユダヤにとってローマの命令は絶対です。

 

ローマ帝国はアウグストゥス皇帝の名において、帝国内にて国勢調査を行います。

ユダヤでも行われ、ユダヤ人の土地、奴隷、家畜も含めた登録が必要となりました。

国勢調査の目的は、住人の数を把握し税収を上げるため。

人口登録のため人々は生まれ故郷に帰されたため、ヨセフもマリアを連れて生まれ故郷のベツレヘムへと向かいます。

税金を搾り取られたユダヤ人たちは、ローマへの憤りが沸くことになります。

国勢調査によりヨセフとマリアがベツレヘムへ向かうというエピソードは、「ルカによる福音書」から来ているのですが、実際のところ、国勢調査が行われたのはイエス誕生から役10年後で、人々は人口登録のために故郷へ帰る必要はなかったそうです。

番組内では、ヨセフとマリアがベツレヘムへ訪れる理由に、国勢調査を利用したのではないか?と話がありました。

重要なのは、イエスがユダヤ人の最も神聖な王、ダビデの町ベツレヘムで産まれること。

当時のユダヤ教の教義で、メシアの条件としてダビデ王の子孫で、ベツレヘムに生まれた男子でなければなかったのです。

イエス誕生時にヨセフとマリアは、ベツレヘムにいる必要があったのですね。

2人はヨセフの故郷ベツレヘムに到着し、ヨセフは友人宅を訪ねます。マリアは出産が近く、友人宅に泊めてもらえないか頼みますが、あいにく家はいっぱいで、ヨセフとマリアは家畜のいる1階で寝泊まりします。

イエスの誕生


フランス・フロリスと工房/羊飼いの礼拝(ブタペスト国立西洋美術館)

イエス・キリストは馬小屋で生まれたとよく言われますが、正確には「家畜」小屋で生まれたそうです。

ルカの福音書によると、イエスが生まれた瞬間、「ダビデの町で救い主が生まれた」という天使の声を羊飼いたちは聞きます。

そしてイエスのもとに祝福に訪れます。

これはダビデ王も羊飼いであり、イエスをダビデの子孫と印象づける話です。

一方、マタイの福音書によるとイエスのもとへ訪れたのは三人の賢人たち。(三博士ともいいます)

東方で昇った星がメシア(救い主)の出現を示したと三人の賢人たちが、まずはエルサレムへ訪れます。

エルサレムを統治していたのはヘロデ王(ヘロデ大王)。王位を守るため敵なら誰でも殺す残虐なユダヤの王で、自分の妻子をも殺害していました。

賢人たちは「ユダヤ王の子のいる土地を教えてくれ」とヘロデ王に尋ねました。

それを聞いたヘロデ王は焦ります。

彼は民が自分を嫌い、正式な王と認めていないのを知っていました。新たなユダヤ王候補となるメシアは自分の存在を脅かす。

ヘロデ王は予言者から、メシアが生まれるのはベツレヘムと聞き、それを賢人たちに教えます。

「その子を見つけたら教えてくれ」と。もちろん自分の脅威となる存在をつぶすため。

賢人たちはエルサレムを去り、イエスのいるベツレヘムへ。

この三賢者たちがイエスのもとへ訪れるシーンは、「東方三博士の礼拝」というタイトルで宗教絵画で頻繁に描かれるテーマ。


ピエトロ・ロレンツェッティ/東方三博士の礼拝(ルーヴル美術館)

三人の賢人は、イエス誕生のお祝いに3つの宝(黄金、投薬、乳香)を捧げます。

賢人の来訪を受けるヨセフとマリア。

しかし賢人からヘロデ王がイエスの場所と運命に気づいたこと知り危険を感じます。

ヘロデ王は、イエスの出現に恐れをなしベツレヘムの2歳以下の子供を皆殺しするよう指示。

ヘロデ王の幼児虐殺は「マタイによる福音書」に出てくる話で、事実かどうかは疑問。旧約聖書の、ファラオが生まれたばかりのヘブライ人の子供を皆殺しするよう命じたが、モーセだけ助かった話から、イエスをモーセに似せようとしたようです。

ヨセフはイエスを守るため、マリアとイエスを連れ、エジプトへと逃げます。

きねちゃん

血が繋がらない子供を全力で守る、「父」の深く誠実な愛に、イエス・キリストの話はヨセフから続くものだと思えました。

新約聖書にはイエスが大人になる過程が描かれておらず、ヨセフがどのように亡くなったか不明ですが、恐らくイエスが公生涯に入る前に亡くなったと言われています。

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