エリザベート歴代ルキーニ役(東宝・帝劇ミュージカル)|ストーリーテラー演じる暗殺者

東宝版ミュージカル『エリザベート』のメインキャストの一人、ルイジ・ルキーニについてまとめました。ルキーニはオーストリア皇后エリザベートの暗殺者。当作品では舞台全体を動かしていく狂言回しの役割を担った重要な役です…!

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黒い帽子、黒いジャケット、黒いズボンは、ルキーニが逮捕された時の服装。ルキーニを演じる役者さんは舞台で同じ服を着ていますね。

東宝版歴代ルイジ・ルキーニ

年表(年齢つき)

敬称略

読み方

  • 初、②→初:ルキーニ役初、②:ルキーニ役2回め、以降同じ
  • 出演時の年齢
  • ルキーニ役初出演は太文字


ルキーニ役
2000年 髙嶋政宏(初・34歳)
2001年 髙嶋政宏(②・35~36歳)
2004年 髙嶋政宏(③・38~39歳)
2005年 髙嶋政宏(④・39歳)
2006年 髙嶋政宏(⑤・40歳)
2008年~
2009年
髙嶋政宏(⑥・42~43歳)
2010年 髙嶋政宏(⑦・44~45歳)
2012年 髙嶋政宏(⑧・46歳)
2015年 山崎育三郎(初・29歳)
尾上松也(初・30歳)
2016年 山崎育三郎(②・30歳)
成河(初・35歳)
2019年 山崎育三郎(③・33歳)
成河(②・38歳)

髙嶋政宏(たかしま まさひろ)

生年月日 1965年10月29日
出生地 東京
身長 185cm
血液型 B型

MEMO
1987年 映画「トットチャンネル」でデビュー。同作品で第11回日本アカデミー賞 新人俳優賞、第30回ブルーリボン賞 新人賞など多数受賞。ドラマ、映画での活躍が多く、2019年は映画『マスカレード・ホテル』、『キングダム』、『空母いぶき』、『3の信長』、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』などに出演。舞台は、『王様と私』の王、『レ・ミゼラブル』のジャベール、『エリザベート』ルイジ・ルキーニなど。

きねちゃん

初演の2000年~2012年もの長い間、シングルキャストで演じられた髙嶋 政宏さん。髙嶋さんのルキーニを何度かみた感想は、ひょうひょうとした掴みどころのないルキーニでした。
ルキーニ役で出演した年

2000年、2001年、2004年、2005年、2006年、2008年~2009年、2010年、2012年

出演時の年齢

34歳~46歳

山崎育三郎(やまざき いくさぶろう)

生年月日 1986年1月18日
出生地  東京都
身長 177cm
血液型 A型

MEMO
2007年、日本上演20周年の『レ・ミゼラブル』(オリジナル演出)でマリウス役として正式デビュー。『モーツァルト!』、『レディ・ベス』、『ロミオ&ジュリエット』、『ミス・サイゴン』などミュージカルの舞台中心に活躍する一方、映画『美女と野獣』の野獣役吹き替え、『昭和元禄落語心中』、『白い巨塔』などドラマ出演も増えてきた。2013年には井上芳雄&浦井健治と伴にユニット”StarS”としてCDデビュー。2019年には尾上松也、城田優とユニット、IMY(あいまい)を結成。

きねちゃん

艶のある美声の持ち主ですが、この作品でのストーリーテラーに重きをおいた役作りは見事。かといって単なる傍観者ではなく、世界から拒絶された怒りや孤独、弱さといった感情がよく伝わってくるルキーニでした。

ルキーニ役で出演した年

2015年、2016年、2019年(予定)

出演時の年齢

29歳~33歳

尾上松也(おのえ まつや)

生年月日 1985年1月30日
出生地 東京都
身長 178cm

MEMO
歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。5歳のとき二代目尾上松也として『伽羅先代萩』の鶴千代役で初舞台。数々の子役で賞を多く受ける。近年は立役として注目され、『鳴神』の鳴神上人、『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助なと゛の大役を任されている。2015年コクーン歌舞伎『三人吉三』では、連日立ち見がでるほどの大成功を納める。歌舞伎以外では、『エリザベート』、蜷川幸雄演出の騒音歌舞伎(ロックミューシ゛カル)『ホ゛クの四谷怪談』、ミュージカル『狸御殿』、新感線☆RS『メタルマクベス』disc2で、主演を務める。

きねちゃん

子供の頃から舞台に立ち続けているだけあって、客席を巻き込むのがとても上手なルキーニ。ちょっとした表情や所作についつい引き込まれてしまうことが多く、良い意味で下品で華がありました。
ルキーニ役で出演した年

2015年

出演時の年齢

30歳

成河(ソンハ)

生年月日 1981年3月26日
出生地  東京都
身長 168cm
血液型 B型

MEMO
大学時代から演劇を始める。2004年『エンジェルス・イン・アメリカ』のエンジェルス役に抜擢され注目をされて以降、数々の舞台に出演し存在感を示している。ストレートプレイ、テレビドラマ、映画でも活躍。映画『美女と野獣』ではルミエール役の吹き替えを担当。ミュージカルは『ハムレット』、『グランドホテル』、『100万回生きたねこ』、『スリル・ミー』などに出演。

きねちゃん

ただのストーリーテラーでは終わらない狂喜に満ちたルキーニ。トート閣下への妄信的な愛をとりわけ強く感じます。ストーリーの内側と外側を自在に行き来し、舞台上の空間を支配してしまうほどの存在感がありました。
ルキーニ役で出演した年

2016年、2019年(予定)

出演時の年齢

35歳~38歳

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なぜエリザベ―トを殺したのか?ルイジ・ルキーニの生涯と人物像

恵まれない子供時代

ルイジ・ルキーニ(ルイジ・ルケーニ)は1873年にフランス・パリで生まれました。

ルキーニはシングルマザーだった母親に生後すぐ養育を放棄され、孤児院や里親の元で育ちます。

9歳からすでに働き始めた彼が、学校に通えたのは生涯で1~2回だけでした。

ルキーニは自らの人生を「みじめだった」と訴えています。母親に存在を否定され置き去りにされ、恵まれない人生を強いられたのだと。

ヨーロッパ各地で活動し、イタリア軍に徴兵されたのちは、有能な兵士として何度も表彰されます。しかし給料に不満を抱き軍を除隊。その後は、スイスへ移住し無政府主義思想に陶酔していきました。

無政府主義思想とは、国家や権威の存在を有害という考えのこと。時として、国家の転覆をもくろみテロや暗殺など破壊行為に及ぶことが歴史上ありました。

エリザベートを狙ったのは”たまたま”

ルキーニは、スイスで犯行に及ぶこととなります。

「有名人であれば誰でもよかった」

のちに獄中でこう語るルキーニが最初に狙ったのは、イタリア国王ウンベルト1世でした。しかしルキーニのいるスイスからイタリアまでの旅費がないため、この計画を断念。

次のターゲットが、ジュネーブに滞在していたフランスの王位継承候補オルレアン公フィリップでした。しかし彼は当初の予定を変更し、すでにジュネーブを去っていました。

そこで狙われたのがエリザベートです。ルキーニは新聞でエリザベートの居場所を知りました。

お忍びで来ていたエリザベートですが、情報が漏れていました。エリザベートへの警護の話も警察から申し出があったのですが、エリザベートが警護を断っていたことも不運でした。

1898年9月10日。レマン湖のほとりで、ルキーニはエリザベートの胸に尖らせたたヤスリを突き刺し殺します。

この時ルキーニは25歳。まだ青年とも呼べる年齢でした。

スイスで逮捕されたルキーニですが、スイスでは死刑がなかったため終身刑となります。彼は死刑制度のある土地へ移ってでも、死刑にして欲しいと望んでいたようです。

逮捕後のルキーニは模範囚でフランス語の勉強もし、子供の頃からの苦難続きの人生も文章にしていました。

しかしこの文章が忽然と消えてしまい、ルキーニは取り乱します。そのうち狂乱するようになり、11年の獄中生活のあと、ベルトで首を吊って自殺します。亡くなったのは37歳のときでした。

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エリザベートの「ルキーニ」について

ストーリテラー

ミュージカル『エリザベート』でのルキーニは、作品の冒頭からラストまでほぼ出ずっぱりで、作品の理解を助ける説明役にして進行役です。

この舞台は40もの断片的なエピソードが集まった作品ですが、個別のエピソードの隙間を埋めて物語として組み立てていくのに、ルキーニはとても重要な存在です。

そして役者さんのルキーニのありようによって、作品の印象が変わります。

ストーリーテラーに徹して、傍観者的な目線外側から眺めているルキーニだと、作品がドキュメンタリーのように感じたり、

テロリストである彼個人として物語の内側に入ることもあり、彼の妄想の世界でルキーニが完全に物語を動かしているようにみえる事もあります。

また、エリザベートたちを嘲笑いつつも、物語に入り込めず、世界から見捨てられた存在のようにみえることも。

ルキーニが歌う曲は、ルキーニの精神状態を表した複雑なメロディーで高音が多いのが特徴です。それも美しい声で歌い上げるのではなく、しゃべるように歌うお芝居の力が要求されます。

ラテン系の陽気さ、テロリストの狂気、劇場の空気をつかみながら進行していくノリの良さ、そして観客からは愛されるための「愛嬌」。歌も踊りもある役ですが、特にお芝居を巧みに操れる役者さんが選ばれる役ではないかと思います。

冷や水をかけるようにリアルをみせる存在

ヒロインで絶世の美女エリザベートが遭遇する数々の不幸・・・その姿や美しいメロディーに観客が夢見心地になっていると、ルキーニが現れ「騙されるな」「こんなのいんちきだ」とののしります。

例えば2幕最初のキッチュでは、エリザベートがエゴイストだと語り、一人息子ルドルフの死に悲しむエリザベートにルキーニがカメラを向けるキッチュリプライズでは、彼女の悲しむ姿も見世物にしてしまいます。

特にキッチュリプライズは、エリザベートにとって最大の不幸に見舞われているシーンで、嘲り笑うルキーニに、思わずドキッとします。

ルキーニが歌う「キッチュ」の意味

エリザベートの2幕最初にルキーニが歌う「キッチュ(Kitsch)♪」。

リズミカルな音楽に合わせて客席からは拍手が度々起こるシーンです。ルキーニが客席に降りてアドリブを言うこともあります。

キッチュとは、陳腐なもの、悪趣味なものを表しますが、このシーンでは「偽物、いんちき」といった意味で使われています。舞台でも出てきますが、家族団らんの絵葉書やシシィとフ仲睦まじいランンツ・ヨーゼフ夫妻のグラスなどは、全部嘘だよ、とルキーニは伝えています。

スイスの銀行に隠し口座があり、私たち観客が聞きたいことと事実は違うだろ、というこの作品のヒロインに対して痛烈に皮肉を浴びせている曲です。

トートとルキーニの関係

トートとルキーニの関係は、演じる役者さんによって異なり、観客の想像にゆだねられている部分です。

ミュージカル『エリザベート』でのトートは、エリザベート自身が作り出した鏡のような存在と解釈できる部分があります。(これも演者さんや観客によって解釈がゆだねられるところ)

ルキーニも、彼が権力者を殺すことに自分の人生の意味を見出していたと考えると、トートはルキーニが生み出した幻想で鏡合わせの存在と捉えることができます。

ルキーニが真の支配者で、遠くからトートを操るイメージを持ちながら演じていた 尾上松也さん(2015年ルキーニ)https://ent.living.jp/column/matsuya/47030/


一方、死を願うエリザベートが最初に生み出した存在がトートと考えると、トートからみたルキーニはエリザベートを黄泉の世界へ連れていくのに便利な存在。トートにとってルキーニは便利な道具だったという解釈もできます。

または、そんなトートの意図に気づかず、ルキーニは自分をトートの使者だと思っている可能性も。

役者さんの演技や、同じ役者さんでもその時々のお芝居によって、印象が変わる面白い関係性です。

きねちゃん

ルキーニのシニカルな視点で舞台が進行していくことも当作品の面白さの1つといえます。

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