「ノートルダムの鐘」観劇後、「カジモド泣ける」「フロローどうしちゃったんだ…かわいそう….」「クワイヤさんたちが迫力ありすぎる」と大きな感動に包まれている方が多いと思います!とても素敵な作品ですよね。
ノートルダムの鐘の結末の受け取り方は、観客にゆだねられているのですが(演出のスコット・シュワルツ氏談)、この作品はメッセージ性の強い作品でもあります。
きねちゃん
「ノートルダムの鐘」のメッセージ
答えて欲しい謎がある
「人間と怪物 どこに違いがあるのだろう」
劇団四季ミュージカル「ノートルダムの鐘」では、この歌詞が2度歌われます。
1度めは舞台が始まってすぐの「ノートルダムの鐘」で、役者さんがカジモドに変身する瞬間に。そして2度めがラストの「フィナーレ」にて。
始まりと締めで2回も繰り返されることから、この問いこそ、この作品が投げかけているものと言えるでしょう。
そしてその答えを探すとしたらこの部分です。
エスメラルダ「あなたは本当に怪物ね。」
フロロー「いいや。違うんだ、エスメラルダ。この数週間で思い知った。私にかけられた呪い、それは私が本当に人間であるということだ。」
これは人間と怪物は表裏一体であることを物語っています。
冒頭のカジモド登場シーンでは、赤ん坊を抱えたフロローの後ろから、ごく普通の青年が出てきます。
この青年が舞台中央に塗った後、墨を顔にぬり、ゆがんだ身体を表現するコブを身に着け、「怪物(カジモド)」へと変身します。
そして作品の中で、カジモドは何度も「怪物」と言葉を投げつけられます。これはカジモドの見た目への偏見からきています。
育ての親であるフロローも「お前は怪物だ」とカジモドへ伝えているシーンがあります。
しかし物語の最後に怪物に見えるのは、人々から尊敬され、位の高い聖職者だったフロローです。
ミュージカル版はさらに、「フロローが悪」と決めつけているのではなく、
何が人を人間にし
何が人を怪物にするのか
と、その過程をも描く作品です。
フロローについて言えば、醜く身体の不自由な甥カジモドを、赤ん坊の頃から親代わりに育ててきた愛情深い一面があります。
フロローがカジモドを「怪物」と呼ぶのも悪意からではなく、世間から守るためにカジモドを諭していた部分もあるはずです。
しかしエスメラルダに出会ってからフロローは理性を失い、彼の権力を暴力的に使ってしまった。フロローも最初から怪物なのではなく、フロローなりに怪物になる過程があります。
カジモドはその見た目から「怪物」と言われていますが、心はとても純粋で優しい青年です。
現代に生きる私たちは、見た目で人を怪物と差別することは無いでしょう。しかし、「人とは違う」ことや人に対して、どういう反応をしているでしょうか?
物語の最後、カジモドがエスメラルダを見送ったあと、観客席を振り返ると、墨は取れ、怪物からまた一般の青年に戻ります。
「なにをもって人は怪物と決めつけるのか」と私たちも問われるんですね。
このメッセージを伝えるのに、舞台に出てくるアンサンブルやクワイヤも重要です。
ガーゴイルや石像になってカジモドの友達を演じているかと思えば、祭りの見物者として、カジモドを罵倒したり、それをただ傍観したり。
観劇している私たちは、「自分もこんな風に、傷つけられている人をただ見ているだけの時があるかもしれない」と思うかもしれません。
つまり、どんな人も「怪物」になれる瞬間がある。
舞台設定は15世紀末と古いですが、マイノリティへの社会的配慮、人として美しくあるべき姿は、現代の私たちにも突き刺さる内容です。
ノートルダムの鐘の宿命「ANAΓKH」とは
原作者のヴィクトル・ユゴーがノートルダム大聖堂を訪れた際、壁に刻まれた「ANAΓKH」という宿命を意味する言葉を目にしたことが、小説の冒頭に書かれています。
原作の意味する「ANAΓKH(宿命)」
原作の「NOTRE-DAME DE PARIS(パリのノートルダム)」では、フロローがANAΓKHと壁に刻みます。聖職者の身でありながらエスメラルダへの抑えきれない欲情、報われない想い、彼女を自分だけのものにしたいという嫉妬心を、自分ではどうする事もできず「ANAΓKH(宿命)」と呼んでいます。
劇団四季の「ANAΓKH(宿命)」
⑨愛は、カジモドが背負った宿命を変えられるのか――。
人間の“光”と“闇”を描いた、真実の物語『ノートルダムの鐘』横浜公演は、4月8日(日)開幕。今なら5月以降のご予約がおすすめです。この続きは、ぜひ劇場でご覧ください!#ノートルダム横浜 pic.twitter.com/UX8HHg75xf— 劇団四季 (@shiki_jp) 2018年4月3日
宿命とは、一般的に自分では変えられることができない定めのことを意味します。
しかし、劇団四季のノートルダムの鐘は「愛は宿命を変えられるのか?」と表現しています。
- 愛していた弟を失ったフロロー
- 人とは違う容姿に生まれたカジモド
- 聖職者という身分ながらエスメラルダに惹かれたフロロー
- フロローに欲情されてしまったエスメラルダ
- エスメラルダを救うために職を失ったフィーバス
宿命を変えられずとも、自らがもつ宿命の中でどう生きたのか。
それを問う作品です。
きねちゃん
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